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工藤探偵事務所

RESEARCH AND INVESTIGATION

Soliloquy of a Super Engineer (6) The Name of The Electronic Book @ Thu, 15 Dec 2011

とあるメルマガに書いた原稿です。
2011年12月号(2011/12/15日発行)されたものです。
ここにも載せておきます。

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◆◇ 『スーパーエンジニアの独り言 第6回“電子書籍の名前”』 ◇◆
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今回の話題は、急速に浸透し普及が始まった電子書籍の話題を取り上げます。

Contents of The Electronic Book

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以前であれば電子ブックやザウルス文庫、近年でケータイ小説と様々な形で
電子書籍は昔から嘱望されていたものではありましたが、最近になり本格的に
普及の兆しがみえます。紙の書籍を凌駕するのではないか?と危惧される程、
脅威に感じるムーブメントを牽引する要因の一つに、電子書籍リーダーが
各社から百花繚乱の如く発売されている現状が挙げられます。それにも増して
急激に普及したスマートフォンやタブレットにより自然と読み手側の環境は
整いつつあるのは事実です。

コンテンツを提供する側としては Amazon、Appleを筆頭に紙媒体での書籍を
デジタル化して扱う試みが市場に投入され、影響は既に日本に及んでいます。
但し、音楽や映画、新聞、それらデジタル化可能な媒体と同様、雑誌や書籍に
於いても様々な懸案が山積されている状況ではあります。しかしながら、
インターネットが誘発するパラダイムシフトが波及しているこの過渡期に、
新たな価値観や体験を共有していく流れは止められない状況です。

EPUB 3

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問題は普及の鍵となる標準化であり、電子書籍に於いても他と同様です。
配布メディアのフォーマット形式は「書籍」を購入する消費者にとっては
重要な問題です。購入した本を「いつまで読むことが出来るのか?」に直結
するからに他ありません。つまり標準化は最重要課題であり日本に於いても
産学連携の活動が見受けられますが、標準化では過去の例示で明白な様に
国際標準が肝要となります。インターネットが関係するので尚更です。

この命題に対しては、電子書籍フォーマット「EPUB 3」が勧告されたことが
現状で一番近い回答になりそうです(2011年10月11日に発表されました)。
EPUB 3」は電子書籍フォーマットの国際標準仕様を策定している団体である
IDPF(International Digital Publishing Forum、国際電子出版フォーラム)
が発表した仕様です。

EPUB 3では、W3Cで策定中のHTML5をベースとしたオープンな電子書籍
フォーマットとされ、縦書きやルビなど日本語を含む多国語での表示を
可能にしている国際化仕様となっているとの事。
また、将来Web標準となるHTML5をベースにしていることもあり、
各ブラウザ実装が期待できる上に各種電子書籍リーダーでも採用される見込みです。
今後は「EPUB 3準拠」などとしてリーダーやコンテンツが登場することで
消費者が書籍を購入しやすくなる環境が次第に整ってくることでしょう。

The Book Read Again, Over And Over

将来EPUBが普及するならばEPUB後継仕様/実装には以前に購入した書籍
を閲覧可能にする変換や後方互換性を伴うことにも期待したいものです。
好きな本は時間が経った後で、何度か読み返したいものです。

何故なら、読む本が同じであっても読み手である自分自身の変化によって
理解できる箇所は増し、また受け取る事の出来る印象や味わいも大幅に
変わってくるものでしょうから。

This is Not the End of the Book

この点について電子書籍ではなく、この「紙の本」をご紹介したいのです。
昨年末に出版された「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」です。
著者はウンベルト・エーコジャン=クロード・カリエール。対談本です。

"This is Not the End of the Book"
by Umberto Eco and Jean Claude Carriere

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ジャン=クロードはフランスの脚本家、俳優であり、ウンベルト・エーコは、
著名な小説『薔薇の名前』の作者です。この小説ではウィリアムとアドソの
師弟コンビが正にホームズとワトソンを想起させます。

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他のエーコ作品でも意図的に歴史的背景や他の文学作品へのオマージュ
とも言えるアナロジーや薀蓄を含んで描写しています。
ですから「紙の書物について」でも愛書家である彼等が薀蓄の博覧会
という様相を呈しています。紙の本に対する愛情とデジタル化された
メディア論に博識を以て一石を投じた内容となっています。

機会があれば、綺麗に装丁されたこの「紙の本」も御一読下さいませ。

Il nome della rosa (The Name of The Rose)

先程紹介した作品『薔薇の名前』は、ショーン・コネリー主演で映画化
されています。舞台は活版印刷術が普及する以前の教会で写本の時代です。
修道士が手書きで複製した大切な「写本(知識)」が図書館の火事によって、
儚くも失われる刹那さが神々しくもあり荘厳にその無常が謳われています。

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活版印刷の発明が「書籍」の普及を可能にしたことで、個々に保有する知識や
技術、果ては心情に至る情報を伝播する方法が確立し、過去の人々の経験を
擬似体験する、または信条や考察を垣間見る、更には空想の世界を旅すること
を可能にしてくれました。書籍を通じその時代に生きている人々の考えや行動
に影響を与え世界を変えてきたのは揺るぎない事実です。

現代ではインターネットにより様々な境界を超えての情報交換が劇的に簡易化
されました。これに加えて、電子書籍がリージョンの制約を越えて集約された
知識の流通が始まるとなれば、新たな時代への変革を更に足早に迎えることに
なるのであろうと想像されます。

直近ではAmazonは先行する音楽配信同様に電子書籍もウェブアプリ版の提供を
始めています。現行の主要なブラウザに対応した実装は、HTML5ベースであり、
ローカルストレージ新機能の採用によりオフラインの閲覧も可能にしている
ことが大きなメリットの一つとなっています。また独自でAmazon Silkという
革新的ウェブブラウザを自社のKindleに搭載する事でオンライン/オフライン
の連携をEC2(サーバ側)とSilk(クライアント側)で処理を分散する仕組みを
提供することで「シームレスな環境」を実現するのかと期待させます。
「継ぎ目が無い」状態がインターネットを快適にするために越えるべき
大きな象徴の一つであると考えられますが、その解決策の候補が電子書籍
いう目的に於いて登場する兆しなのかもしれません。

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「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」を図書館で電子ブックリーダー
片手に読む日も遠くないのかもしれません。


では次回をお楽しみに。

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